生活困窮者自立支援法

この土日は、全国ネットワークの設立の会と前記の交流大会がありました。
 来年の4月より、生活困窮者生活支援法が施行実施されます。 ぜひ、生活困窮者という用語に着目をしていただきたいのです。生活困窮の背景にある多くの事象は、既存の社会福祉の制度では対応が難しい側面があります。
 例えば、福祉サービスの提供や生活保護という枠組みでは、自殺も、孤立も引き籠りも、殺人、犯罪、ドラックなど意識の根底にある事情から起きている社会病理学的な行為を防ぐことが困難です。この認識は、拙著『コミュニティケアと社会福祉の地平』で指摘している‘意識の認識に規定される事象’に係る問題には、既存の社会福祉関係法や制度では対応できないことと同意です。

 そこで、農水商所管・『地域における食と農と福祉の連携』事業検討委員会(座長渡邉洋一)では、テーマの検討の過程から、新しい場(協働空間)に期待をしたいと思います。
  都会で生きていくことに困難となっている者
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        協働空間
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  中山間地域での過疎高齢に直面している皆様

  今回参加することを決めた私たち、生活困窮者自立支援全国ネットワークの設立の会の社員候補者は、中山間地域での過疎高齢に直面している皆様のお力をおかしいただきたいのです。とりわけ、若くして引き籠り、自殺にまで・・・。孤立したまま都会で孤立して死を迎えている高齢者の方・・その方たちの故郷は、まさに里海・里山で暮らしです。作野氏の提起される『集落福祉』です。私は著作の中で『風土』として説明しています。里山福祉という風土を醸成する力が過疎高齢の中山間地域や島嶼部にはあるのです。‘意識の認識に規定される事象’と説明したことは、和辻哲郎の風土の中で癒されるように思います。
 作野氏の『村おさめ』という概念には、人間らしい協働空間を思い浮かべることができます。そして、 この私の概念‘風土的な里山福祉’と作野氏の‘ありのままの集落の福祉’の交流軸に‘協働空間’があるように思います。この協働空間は、物語性が不可欠です。ナラティブアプローチといいます。古民家、古い木造の学校、囲炉裏、釜戸、思いでや同じ物語を協働できる空間なのです。シャッターの降りた空き店舗で、空き家でも、何でも良いのです。租税をかけた近代的な建物ではありません。補助金など必要はないのです。
 視点をかえれば、人と人の距離、人と人のかかわり、人間関係、社会関係の未成熟とも説明ができます。この社会関係の課題に働きかけること、地域社会の問題に組み替えて対応する、この方法と手段が都会や市部ないのです。しかし、集落には、閉鎖的と批判されながら自然発生的に持ってきたものです。そのお力をおかりしたいのです。
 21世紀現代社会で、生活困窮者が若い方を中心に増え続けています。この度、よく国会がこの生活困窮者生活支援法を制定させたものと思います。制度化にかかわったみなさまのご努力に敬意をあらわしたいとおもいます。私たちの委員会の『地域における食と農と福祉の連携』の検討会は、その思いにこたえられたらと思います。

          地域における食と農と福祉の連携に関する検討委員会座長              渡邉洋一(元・青森県立保健大学大学院教授)