社会保障と社会福祉の法律の体系

 大変に残念ですが、今日の社会保障のシステムは、セーフティネットとして機能は崩壊しつつあり、構造矛盾にさらされています。それでも、21世紀、次の世代に制度を維持して、引きつがなければなりません。おそらく、社会福祉・年金・医療・子育て支援など包括的な仕組みは、縦割りのまま既存の制度だけでは対応は無理なようです。

 たとえば、社会的に取り組むべき問題を分析している貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズと説明した三浦文夫の枠組みが有名です。しかし、こんに知的な、生活困窮者自立支援法の対象者や、自殺、孤立、将来に夢を持ちえない若者の閉塞感など、貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズの解決だけでは解決が困難なようです。

 この貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズを超えたニーズが顕在化し始めたのは、平成12年の 「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書で、社会援護局長の炭谷茂氏の諮問委員会として問題提起されたことからです。一方、宮本太郎氏は、‘雇用’の視点から戦後の社会保障は、完全雇用による企業を中心に民間社会資本に支えられてきたとしています。さらに、宮本氏は、戦後の雇用システムは、グローバリズムによって資本主義的な企業雇用は不安定化したという指摘です。

 このように、将来への閉塞感は、新しいニーズを社会に問いかけ始めました。貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズ対応では解決が困難となりつつあるようです。言い換えれば、租税による公的な制度だけでは対応ができなくなっている新しいニーズです。整理をしてみると、貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズは、税による公的責任による社会保障システムです、この領域を制度的ニーズと整理してみたいと思います。一方、非制度的ニーズは、公的責任だけでは対応できない側面のようです。そして、人と人とのつながりに、地域で安定して役割を持てること、人間関係や社会関係に根差しているニーズ(これらのニーズに対応できないため)として顕在化したようです。

 また、拙著『コミュニティケアと社会福祉展望』2005年と『コミュニティケアと社会福祉地平』2013年で指摘し続けている‘存在の認識’という視座と‘意識の認識’の視座は、この新しいニーズが顕在化し、新しく社会にもたらすことを提起したものでした。

 その課題の一つとして、社会保障の縦割りからの脱却や、社会福祉実施システムの包括化のためには、次のような社会福祉法体系に改革する必要があることを指摘します。求められる法体系は、欧州で制定されている‘社会サービス法’を中心として包括で機能的で効率的な法のシステムです。 

 新しい法体系

       生活保護法

       生活困窮者支援法 

       児童福祉法(子育て支援を含む内容にして) 

       包括的な介護保険法に改正(重篤なニーズの高齢者・障がい者など) 

       新・社会サービス法(現行の老人福祉法や障がい関係法なとを包括法に、さらに雇

                  用関係の法律を加える、できれば教育関係の法も組入れ) 

       社会福祉法から仮称社会保障法へ改正 

  社会サービス法は、1970年に英国で制定されました。いわゆる包括法です。その後、英国は1990年にNHS&コミュニティケア法へと医療・保健・福祉の包括法に進化しています。スウェーデンなども社会サービス法です。一方、英国は、チャリタブル法(1600年初頭に制定されているチャリティ法)があります。制度的ニーズは、NHS&コミュニティケア法で対応していて、非制度的ニーズは、チャリタブル法など寄付文化やボランタリズムによる対応を促進しています。 英国は、さらに、ソーシャルインクルージョン政策を展開しています。その目的は我が国の生活困窮者支援法や発達障害者支援法などの支援を法律化することと同意でした。また、我が国の社会福祉法は、地域社会への参加を規定しています。この参加は、雇用機会、社会的役割、地域活動、祭りや冠婚葬祭など活性化を図る必要を指摘したものです。