里山・里海の福祉

歴史的に、日本の風土にかなう暮らしは、里山や里海での暮らしの中にあった。

我が国は春夏秋冬の季節感と、地震雷火事や台風など災害が多い島国である。

先人たちは、災害を受けながらも、創意工夫をして稲穂を棚田でつくり、岩を組み中山間地域で暮らしてきた。 日本人のきめ細かい感性も自然から学び獲得してきたもののようだ。

安心をして地域の暮らしにあって、人を愛し、子供を育て、働き、最後の時をむかえる。そのような暮らしの積み上げた文化は特異なもののようだ。 たとえば、麹は、日本にしかないという。麹菌は日本人が醸成してきたもののようである。

たとえ、障がいをもっていたとしても、加齢で働けなくなっても、里山や里海に自然に還っていけた(死生観)。そこに安心感があったからである。

人間の最後の時は、里山と里海の中で、迎えることが自然だ。病院で過度な高度医療で全身を管につながれ、また、入所施設で人権を無視したかのような支援に苦情すら言えない状態は不自然だといえる。

21世紀、今こそ、里山と里海の福祉を考える必要がある。拙著で指摘した‘意識の認識に規定される福祉’の意味でもある。