風土

風土という用語は、多くの識者が使用している。その中でも、和辻哲郎による『風土』(岩波書店)が第一に思い浮かぶ。あわせて、和辻倫理学は、西田哲学を背景として、東洋的な思索を組み入れて構築されている。例えば、『人間存在の二重構造』という枠組は、社会福祉の岡村重夫の理論にも大きな影響を与えている、『社会関係の二重構造』という岡村原論は、和辻を抜きにして理解することは困難である。

拙著で『社会福祉の産土』という用語を使用してみた、この『産土うぶすな』にも、風土の意味あいを込めている。東洋的な国民性に根ざして社会福祉観を構築する必要性を指摘したものであって、欧米からの輸入理論だけでは、21世紀の社会福祉観を構築できないと考えてきた。特に、租税の配分に過度に依存した社会福祉実施体制では、少子高齢社会を乗り切れないのではという問題意識からである。

市民参加と寄付文化を背景とした、日本的ボランタリズムを説明するために、風土という用語に着目している。拙著では、このような意味を組み込んでいる風土的社会福祉という実施体制を組むためには、欧米の『社会サービス法』の趣旨を日本的な実施体制に組み入れた社会福祉改革が求められていると提起している。