社会福祉の閉塞感

社会保障制度全体のセーフティネットが揺らいでいることは周知なこととなってきた。その理由は次の三点といえる。

① 戦後の社会福祉の実施体制が護送船団方式(社会福祉法人問題など)で古色にまみれて、時代にあわなくなっている。

② 欧米の社会福祉の関係法律が「社会サービス法」という包括法であることに対して、我が国は個別 法で縦割りの既得権益を生みやすい構造にある。

③ 本邦の国債残高が1000兆円を超えて、毎年数兆円の社会保障経費が伸びている。単なる消費税増だけでは対応が困難である。

さらに、急激な人口減社会を迎えていて、社会福祉関係機関・施設の職員の確保が困難となりつつある。地方過疎部では高齢化が頂点となっていて、高齢者が減じつつあるが、入所施設が多く過剰となりつつある。一方、都市部は高齢者数の激増の中、ケア施設が少なく介護難民化することが危惧されている。

地方部は、過疎高齢化が進み、自給自足の地域と家族のシステムが弱くなっている。あわせて、若者の都会への流失が進んでいる。結果、魅力がない過疎部が集落機能が喪失し、限界集落となっている。しかし、本来は、地方部の相互扶助機能と、役割の分担による社会関係が経済的には貧しくとも、精神的には豊かであって、集落の役割分担機能が、健康を創造し、孤立を防いでいて、この機能は、より評価すべきである。その意味では、都会高齢者の生き甲斐、孤立 介護問題が逆に危機的である。

大学の社会福祉学科に学ぶ若者も、社会福祉へ夢よりも、生活手段として考えていて、他に高い賃金が得られる職場があれば異動する可能性が高い。特に、若者の社会福祉観は閉塞的な意識があるように思う。ここに最大の問題がある。